第VIII部 経営
第31章
人と店の仕組み
おいしい寿司を握れることと、店を長く続けられることは、同じではありません。店を続ける力は、清潔さを守る習慣と、人を育てて守る仕組みと、数字を見る習慣から生まれます。この章では、職人が店主になったときに必要な「店の仕組み」を学びます。
この章で学ぶこと
- QSC の三つの意味と、店が「長く」続くために清潔さが欠かせない理由を説明できる(一級)
- 5S の五つを言い、「なぜ」を5回くり返して原因を探す方法を店の例で示せる(一級)
- 「見て覚えろ」に頼らず、手順書と任せる順番で人を育てる方法を説明できる(一級)
- 日本の労働時間・休憩・休日・保険の基本と、体調の悪い職人を休ませる理由を説明できる(一級)
- 日報で見る数字と、もしものときの備えを挙げられる(一級)
31.1 店が長く続く条件 ― QSC
飲食店の成功は、味やサービスが良いというだけでは成し遂げられません。その成功を測る物差しとして、飲食の世界で最も大事だと言われているのがQSC(キューエスシー)です。Q は品質、S はサービス、C は清潔さを指します。それぞれ英語の頭文字です。
長く成功している店は、意識しているかどうかにかかわらず、この三つの水準が高いと言われます。ここで一番大事なのは「長く」という点です。テレビや雑誌に取り上げられて、短い間だけ繁盛することはあります。しかし、QSC が高くないまま長く成功することは、ほぼできません。
マクドナルドが成功した理由
QSC は、マクドナルドの実質的な創業者であるレイ・クロックが最初に唱えたものと言われます。ハンバーガーの会社で、マクドナルドほどお金の面で成功した会社はありません。広告にお金をかけたからでしょうか。広告費をかけられたのは、成功して利益が出た結果です。
Q(品質)は、味だけではありません。料理、店のつくり、雰囲気、そして値段まで含めた質です。高いお金を払えば、もっとおいしいハンバーガーはたくさんあります。けれども、値段と味の釣り合い、つまりお値打ちで見ると、話は変わります。
S(サービス)も、接客の言葉だけではありません。マクドナルドには写真付きの分かりやすいメニューがあります。注文すると、作りたての品が素早く出てきます。駅に近い、車で行きやすいといった良い立地も、それだけでサービスです。どんなにおいしくても、30分待たされれば、その時間は客にとって損になります。マクドナルドは、多くの人の望みを大きく満たしているのです。
C(清潔さ)は、次の節でくわしく見ます。目指すのは、きれい好きな人でも気持ちよく食べられる店です。
協会の資料は、こうまとめています。三流は料理や内装といった Q にばかり気を取られます。二流は Q に加えて S に力を注ぎます。一流は、さらに C に気を配っているのです。
31.2 清潔さは経営そのもの
テーブルや床がべたべたしているだけで、食べる気がなくなる人は大勢います。ごみが床にある、虫が歩いている、トイレが汚れている。それを見たら、二度とその店に来ない人も多いはずです。
開店したばかりの店はきれいです。しかし、時がたつと、いつの間にか清潔感のない店になってしまいます。これはよくあることです。これを防ぐために、マクドナルドは「クリーン・アズ・ユー・ゴー」という合い言葉を掲げています。「行くところ、いつでも清掃」という意味です。目標は「開店一日目の状態を保つ」ことです。
パナソニックの創業者、松下幸之助は、かつて長者番付で日本一になった人です。事業の成功の秘訣を聞かれて、「まずは、当たり前のことをきちんとすること」と答えました。当たり前のこととは何かと聞かれると、「看板が日に焼けて色が変わったのを、放っておかずに直すこと」と答えています。開店一日目の状態を目指す考え方と同じです。
有名店の清掃
ミシュランで三つ星を得た日本料理店「龍吟」が、東京の六本木にあったころの話です。定休日は毎週日曜日でした。龍吟では、土曜日の夜の営業が終わると、そのまま翌朝の始発のころ、朝6時ごろまで、社員全員で店を掃除しました。換気扇からダクトまで、ぴかぴかになるまで、毎週欠かさず、何時間も自分たちで磨き上げたのです。
フランス料理店「HAJIME」の米田肇シェフは、電子部品の設計者から料理人になった異色の人です。当時のミシュランで最も短い、1年5か月で三つ星を得ました。米田シェフはこう話しています。「エアコンの吹き出し口は毎日掃除する。お客様から見えないところのほこりも残さない。店にちり一つない状態を目指すと、凛とした空気が流れる。神は細部に宿る」。そして「料理人は、床に落ちたちり一つでも気になることが大切な条件だ」とも話しています。清掃にこだわるシェフが最も短い期間で三つ星を得たことは、清潔さの大切さの裏付けです。
職人が坊主にしている理由
高級な有名和食店では、多くの職人が坊主頭にしています。これには理由があります。髪の毛が料理に入らないようにするためです。髪に付けた整髪料に、手が触れる心配もありません。職人が坊主であることは、C に力を入れている証拠でもあります。店に凛とした空気が流れ、お客様は安心して食事ができます。実際に、職人が坊主にしただけで売上が増えた、と話す飲食店の店主は多くいます。
掃除は外に任せればよいのか
掃除は店の本業ではないので、業者に任せればよい、という意見もあります。働く時間が短くなり、辞める人を減らせるかもしれません。
しかし、自分たちで店や器や道具を一生懸命磨くと、清潔さへの意識が変わります。物を大事にする心が育ち、仕込みや営業中の食材への向き合い方が変わります。掃除を外に任せているだけの店と、一人ひとりが高い水準で清潔を保とうとしている店では、流れる空気が違うのです。なお、マクドナルドは掃除を業者に任せ、営業時間外に業者が店に入っています。それでも、社員一人ひとりに清潔さの大切さを徹底させています。
世界遺産の寺や神社
世界遺産になるような寺や神社を思い浮かべてください。掃除が行き届いていないのに人気のある寺や神社を、知っているでしょうか。そうした寺や神社は、間違いなく掃除が行き届いています。掃除をしなければ、古い木の建物はただのお化け屋敷です。木は傷み、ほこりがたまり、庭も荒れて、人が寄りつかなくなります。
反対に、長い年月、毎日拭き掃除を続けると、木はつやつやと輝きます。新しいものにはない、歴史を感じさせる気配をまとうのです。こうした手入れを続けて、初めて世界遺産として認められます。建物は古いから魅力がなくなるのではありません。掃除を続けないから、魅力がなくなるのです。清掃を徹底することを、あなたの店の文化にしてください。
川六 ― 清掃・挨拶・電話対応
「株式会社川六(かわろく)」は、倒産しそうな、あるいは倒産したホテルを買い取り、人気のホテルに立て直すことで知られる会社です。つぶれかけたホテルを立て直すには、何をすればよいでしょうか。多くの人は、内装を変え、良い料理人を雇い、値段を変え、宣伝に力を入れる、と考えます。しかし、つぶれるホテルの多くは、それを一生懸命やったのに、つぶれてしまうのです。
つぶれるホテルのほとんどは、当たり前のことができていません。それは、清掃と挨拶と電話対応です。単純で当たり前の仕事ですが、きちんと続けるのは難しいのです。川六は、この三つを徹底して、廃業寸前の旅館を人気のビジネスホテルに生まれ変わらせています。
髪の毛が落ちている、ほこりがたまっている、便器が汚い。それではお客様はまた来てくれません。ベッドの下や、サイドボードの裏を掃除していないホテルは意外に多いのです。目に見えるところだけを掃除するホテルは、決して清潔ではありません。泊まる人は、そうした場所をいちいち調べなくても、清潔かどうかを肌で感じ取っています。川六では、社長みずから膝をついて、雑巾で床を磨きます。天井もくまなく掃除します。目指すのは、宝田圭一さんの本の題名どおり、『地域でいちばんピカピカなホテル』(あさ出版)です。挨拶と電話対応は、第26章で学びました。
寿司屋にとって、清潔さは見た目だけの話ではありません。食中毒を一度でも起こせば、それまで積み上げた信用を失います。たった一度の食中毒で、店がつぶれることもあります(第3章)。
31.3 仕組みにする ― 5S
清掃をさらに一段上げるなら、「トヨタの5S(ごエス)」と呼ばれる水準を目指しましょう。5S は、整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の五つです。ローマ字で書いたときの頭文字が、どれも S になります。
- 整理 要らないものを処分することです。
- 整頓 欲しいものを、いつでもすぐ取り出せるようにすることです。
- 清掃 きれいにすることです。
- 清潔 きれいであり続けることです。清掃も大切ですが、もっと大切なのはこちらです。
- 躾 汚れにくい仕組みを作り、それを守る習慣を身に付けることです。最後のこれが一番大事です。
「なぜ」を5回くり返す
汚れ、ごみ、散らかりの一つひとつについて、「なぜ」を必ず5回くり返します。そうして本当の原因を突き止め、直します。目指すのは、汚したくても汚れない仕組みです。そして、その仕組みを守る躾です。5回くり返すのには深い理由があり、トヨタが成功している理由がうかがえる仕組みです。
寿司屋での例を一つ挙げます。これは説明のための例です。
- なぜ1 つけ場の床にシャリが落ちている。なぜか。握るときに手からこぼれるからです。
- なぜ2 なぜこぼれるのか。シャリびつから手元までが遠く、運ぶ途中で落ちるからです。
- なぜ3 なぜ遠いのか。シャリびつの置き場が決まっておらず、日によって変わるからです。
- なぜ4 なぜ決まっていないのか。台の上に使わない道具が置いてあり、場所がないからです。
- なぜ5 なぜ使わない道具があるのか。要らないものを片付ける決まりがないからです。
この例では、床を拭くだけでは明日も同じことが起きます。使わない道具を片付けて(整理)、シャリびつの場所を決めて(整頓)、それを全員で守る(躾)。そうすれば、床にシャリが落ちにくくなります。
飲食店では、毎日少しずつでも、働く人が清潔を保とうとする仕組みを作ることが大切です。菌が増えない仕組みと、それを守る習慣を根付かせることが、長く栄えるために欠かせません。
31.4 人を雇い、育てる
寿司の世界では、長く「見て覚えろ」と言われてきました。先輩の手元を見て、自分で考えて盗む。そうして身に付けた技には強さがあります。しかし、今の店でそれだけに頼ると、困ることがあります。覚えるまでに時間がかかり、教わらないまま辞めていく人も増えます。
とくに衛生は、見て覚えるだけでは足りません。なぜ10℃以下に保つのか。なぜ手を二度洗うのか。理由を知らない職人は、暑い国や設備の違う店で、同じやり方をして事故を起こします。理由を言葉で教えることが、次の世代の安全を作ります(第26章)。
手順書を作る
店の仕事を、紙に書き出してみましょう。シャリの炊き方と合わせ方、魚の下処理、冷蔵庫の置き場所、開店前と閉店後の掃除。順番と、守る温度と時間と、その理由を書きます。写真を添えると、外国から来た人にも伝わります。
手順書があると、教える人によって言うことが変わりません。店主が休んだ日も、同じ質で仕事ができます。やり方を変えたら、手順書も書き直します。
任せる順番
新しい人には、次のような順番で仕事を任せていくのが一般的です。まず手洗いと掃除と洗い物。次に、仕込みの手伝いとシャリ炊き。それから巻物や玉子、そして魚のおろしと切り付け、最後に握りとカウンターです。どの段階でも、最初に教えるのは衛生の決まりです。一つの仕事ができるようになったら、それを本人にも分かる形で認め、次の仕事に進めます。
評価と給与
何ができれば一人前と認め、給与がどう上がるのか。これを店主の頭の中だけにしまっておくと、働く人は先が見えず不安になります。できる仕事を一覧にした表を作り、一つずつ印を付けていくと、本人も店主も今の位置が分かります。給与の決め方と、上がる条件も、できるだけ言葉にして伝えましょう。
叱り方にも気を付けます。人前で人格を責める、手を出す、といったことは、人を育てません。日本では、職場のパワーハラスメント(立場を使ったいじめや嫌がらせ)を防ぐ取り組みが、すべての事業主に義務付けられています。
31.5 働く人を守る ― 労務の基本
人を一人でも雇えば、店主は雇い主としての決まりを守らなければなりません。ここでは日本の制度の基本を挙げます。制度は国や地域によって違い、同じ日本でも法改正で変わります。営業する国・地域・時期の制度を必ず確かめてください。迷ったときは、労働基準監督署や社会保険労務士に相談します。
労働時間・休憩・休日
日本の労働基準法では、働く時間は原則として1日8時間、1週40時間までです。ただし、働く人が常に10人未満の飲食店などは、1週44時間まで認める特例があります。これを超えて働いてもらうには、働く人の代表と「36協定(さぶろくきょうてい)」という取り決めを結び、労働基準監督署に届け出ます。そのうえで、決められた割合以上の割増賃金を払います。
休憩は、働く時間が6時間を超えるなら45分以上、8時間を超えるなら1時間以上です。休日は、毎週少なくとも1日、または4週間で4日以上です。
| 項目 | 決まりの概要 |
|---|---|
| 労働時間 | 原則1日8時間・1週40時間。常に10人未満の飲食店などは1週44時間の特例 |
| 残業と休日出勤 | 36協定を結んで届け出る。残業の上限は原則月45時間・年360時間 |
| 休憩 | 6時間を超えると45分以上、8時間を超えると1時間以上 |
| 休日 | 毎週1日以上、または4週間で4日以上 |
| 割増賃金 | 残業は25%以上、月60時間を超えた分は50%以上。夜10時から朝5時の深夜は25%以上。法定の休日は35%以上 |
| 年次有給休暇 | 6か月続けて働き、8割以上出勤すると10日。パートやアルバイトも日数に応じて付く。年10日以上付く人には年5日を取らせる |
| 最低賃金 | 都道府県ごとに決まり、毎年改定される。アルバイトにも適用 |
表の中身を言葉でまとめます。時間は1日8時間・週40時間が原則です。残業には取り決めと届け出と割増賃金が要ります。有給休暇は、アルバイトにも付きます。最低賃金は地域ごとに毎年変わるので、金額は毎年確かめます。
雇うときに決めること
雇うときは、給与、働く時間、休日、仕事の内容などを書面で示します。口約束だけにしてはいけません。働く人が常に10人以上になれば、就業規則(店の働き方の決まり)を作って届け出ます。18歳未満の人は、原則として夜10時から朝5時までは働かせられません。外国の人を雇うときは、在留カードで、その人が働いてよい資格と範囲を確かめます。
保険
人を一人でも雇えば、アルバイトであっても労災保険(仕事中や通勤中のけがや病気に備える国の保険)に入ります。包丁や熱湯や濡れた床がある寿司屋は、けがと無縁ではありません。雇用保険(失業したときなどに備える保険)は、週20時間以上働き、31日以上雇う見込みのある人が対象です。この条件は法改正で広がる予定です。健康保険と厚生年金は、会社の形の店なら一人目から加入します。個人の店は人数などで扱いが違い、パートの加入条件も見直しが続いています。
職人の健康を守る
雇い主は、雇い入れたときと年1回、健康診断を受けさせます。夜10時から朝5時の深夜の仕事を常にしている人は、6か月に1回です。寿司屋ではこれに加えて、検便が欠かせません。
働く人の健康は、客の安全と一続きです。ノロウイルスは、症状が消えた後も1週間から長いと1か月、便に出続けます。ノロウイルスにかかった職人は、検便でウイルスがないと確かめられるまで、食品に直接触れる仕事に戻しません(第3章)。手に傷や化膿があるときも、素手で食品に触れる工程から外します。
31.6 数字で店を見る習慣
腕の良い職人ほど、魚の状態は毎日よく見ます。同じように、店の数字も毎日見る習慣を付けましょう。そのための道具が日報です。日報は、その日の店の様子を数字と短い言葉で残す記録です。
日報に書くもの
毎日書くのは、売上、客数、客単価、仕入れ、ロスです。客単価は、売上を客数で割ったものです。ロスは、捨てたものや失敗したものを、品名と量で書きます。天気や予約の取り消しも一言添えます。
架空の小さな寿司店で例を示します。数字はすべて説明のための例です。ある日の売上が24万円、客数が20人だったとします。客単価は、24万円を20人で割って1万2千円です。翌週の同じ曜日に、客数は同じ20人で、売上が20万円に下がっていたとします。客単価は1万円です。客数は変わらないので、一人あたりの注文が減ったことが分かります。数字が、考える手がかりをくれます。
月ごとに振り返る
月末には、一か月の日報をまとめます。棚卸しをして、その月に本当に使った原価を出します(第28章)。そして、原価率、人件費、家賃、利益を、先月や去年の同じ月と比べます。原価率は、原価を売上で割ったものです。食材の原価と人件費を合わせた割合は FL 比率と呼ばれ、一般に売上の6割以内が目安と言われます。数字の読み方は第27章で学びました。
大事なのは、数字を責めるために使わないことです。ロスを正直に書いた人を叱れば、次から誰も書きません。数字は、店を良くするための材料です。
31.7 もしもに備える
どれほど気を付けても、事故は起こりえます。起きてから慌てないように、開店前と毎年の見直しで備えておきます。
保険に入る
飲食店が考えておきたい保険には、次のようなものがあります。客にけがをさせたときや物を壊したときの賠償責任保険。出した料理で客が体を壊したときの生産物賠償責任保険、いわゆる PL 保険と、食中毒の見舞いの費用に備える保険。火事や水漏れで店や設備が壊れたときの火災保険。そして、営業できない間の損を補う休業補償です。とくに食中毒で営業を止めたときに補償されるかどうかを、開店前に確かめます。
事故やクレームが起きたら
食中毒の疑いの連絡を受けたときの初動は、第3章で学びました。客への対応、保健所への連絡、謝罪と再発の防止は、第26章で学びました。どちらにも共通する原則は、隠さないことです。そのために、日ごろから仕入れの伝票、冷蔵庫の温度、働く人の体調を記録しておきます。記録は、原因を突き止める材料にも、店が原因でないことを示す材料にもなります。連絡先の一覧、つまり保健所、保険会社、取引先、従業員の連絡先を、店の決まった場所に貼っておきましょう。
店を続けるための備え
小さな店の一番の弱みは、店主が倒れたら止まることです。手順書を作り、二番手を育てておけば、店主が休んでも店は回ります。停電や断水、地震のときに、冷蔵庫の中の食材をどう判断するか、営業をどうするかも、あらかじめ決めておきます。温度が分からなくなった生ものは、もったいなくても捨てます。そして、手元の現金を何か月分か持っておくことが、休まざるをえないときの支えになります(第27章)。
どれも派手な仕事ではありません。しかし、当たり前のことを毎日きちんと続ける店だけが、長く続きます。
この章のまとめ
- QSC は品質・サービス・清潔さ。品質は値段を含めた質で、短い繁盛はあっても、QSC なしに長く成功することはほぼできない。(一級)
- 目指すのは「開店一日目の状態を保つ」こと。有名店の清掃、坊主頭、世界遺産の寺社、川六の「清掃・挨拶・電話対応」は、清潔さが店の価値を決めることを示している。(一級)
- 5S は整理・整頓・清掃・清潔・躾。「なぜ」を5回くり返して本当の原因を直し、汚れない仕組みと守る習慣を作る。(一級)
- 人は手順書と任せる順番で育てる。衛生は理由とともに最初に教え、評価と給与の決め方を言葉にする。(一級)
- 日本では労働時間は原則1日8時間・週40時間、休憩は6時間超で45分・8時間超で1時間。保険と健康診断も雇い主の義務。営業する国・地域・時期の制度を必ず確かめる。(一級)
- 体調の悪い職人は生ものに触れさせない。体調を言い出せる店を作ることが店主の衛生管理である。(一級)
- 日報で売上・客数・客単価・仕入れ・ロスを毎日見て、月ごとに振り返る。保険と記録と二番手で、もしもに備える。(一級)
確認問題
問1 QSC と清潔さについての説明として、最も適切なものはどれか。
a QSC の Q は、料理の味だけを指す。
b テレビで取り上げられれば、QSC が低くても長く成功できる。
c 清潔さの目標は「開店一日目の状態を保つ」ことである。
d 掃除を業者に任せている店は、清潔さを重んじていない。
e 建物が古くなれば、掃除をしても魅力は必ず失われる。
答え:c
マクドナルドは「行くところ、いつでも清掃」を掲げ、開店一日目の状態を保つことを目標にしています。Q は値段を含めた質です。マスコミの力で一時的に繁盛しても、QSC なしに長く成功することはほぼできません。マクドナルドは掃除を業者に任せていますが、社員一人ひとりに清潔さの大切さを徹底させています。世界遺産の寺社のように、古い建物も手入れを続ければ輝きます。
問2 5S のうち、汚れにくい仕組みを作り、それを守る習慣を身に付けることを指し、最も大事だとされるものはどれか。
a 整理
b 整頓
c 清掃
d 清潔
e 躾
答え:e
整理は要らないものを処分すること、整頓は欲しいものをすぐ取り出せるようにすること、清掃はきれいにすること、清潔はきれいであり続けることです。最後の躾が一番大事です。汚れやごみの一つひとつについて「なぜ」を5回くり返して本当の原因を直し、その仕組みを守る習慣を根付かせます。
問3 日本で寿司店が人を雇うときの考え方として、最も適切なものはどれか。
a アルバイトには年次有給休暇は付かない。
b 労災保険は、正社員が5人以上になってから入ればよい。
c 6時間を超えて働く日は、45分以上の休憩を与える。
d ノロウイルスにかかった職人は、症状が消えた翌日から握りに戻してよい。
e 日本の制度を守っていれば、海外の店でもそのまま通用する。
答え:c
休憩は、6時間を超えると45分以上、8時間を超えると1時間以上です。有給休暇はアルバイトにも日数に応じて付きます。労災保険は、アルバイトを含めて一人でも雇えば入ります。ノロウイルスは症状が消えた後も便に出続けるので、検便でウイルスがないと確かめられるまで食品に直接触れる仕事に戻しません。制度は国・地域・時期で違うので、営業する場所の制度を必ず確かめます。

