
第II部 シャリ
第7章
米を知る ― 米と炊飯
寿司の味の半分はシャリで決まる、と職人はよく言います。そしてシャリの出来は、合わせ酢を打つ前にほとんど決まっています。米を選び、洗い、水を吸わせ、炊くところです。この章では、寿司に向く米と、炊き上がるまでの一つ一つの手順を、「なぜそうするのか」と一緒に学びます。
この章で学ぶこと
- 寿司に向く米の条件と、新米・古米の扱い方を説明できる
- 洗米・浸水・ザル上げの手順と、それぞれの理由を説明できる
- 硬水で炊くとどうなるか、海外でどう対処するかを説明できる
- 炊飯と蒸らしの要点、浸水中や炊いた後の米を放っておいてはいけない理由を説明できる
- デンプンの糊化と老化を、温度と水分の条件とともに説明できる(一級)
7.1 寿司に向く米
米粒の大部分はデンプンです。デンプンには、二つの種類があります。一本の鎖のようにまっすぐつながったアミロースと、枝分かれして房のように広がったアミロペクチンです。
まっすぐな棒は、束ねてもすぐにほどけます。枝のたくさん付いた小枝は、絡み合ってほどけません。同じように、アミロースが多い米は粒がほぐれやすくなります。アミロペクチンが多い米は、粘りが強くなります。この二つの割合で、米の食感はほぼ決まります。
日本でふだん食べるうるち米は、アミロースが約17〜20%です。餅や赤飯に使うもち米は、アミロースがほぼ0%です。粘りが強すぎて団子になり、口の中でほどけません。反対に、細長い長粒種、つまりインディカ米の多くは、アミロースが20〜30%と多めです。炊くとパラパラになって、握れません。寿司に向くのはその中間です。形を保つだけの粘りがあり、口の中では一粒ずつほどける米です。
選ぶときの三つの目安
- 粘りすぎないこと。
- 粒がしっかりしていること。炊いても、酢を合わせて切っても潰れない。これを職人は「粒が立つ」と言います。
- 冷めても硬くなりにくいこと。シャリは炊きたてではなく、人肌に冷ましてから食べるものだからです。
ササニシキは粒離れがよく、あっさりした味が酢とぶつかりません。だから江戸前の職人に好まれてきました。コシヒカリは粘りと甘みが強いので、水を控えたり古米を混ぜたりして使います。ミルキークイーンのような低アミロース米は、寿司には粘りすぎます。銘柄の知名度ではなく、性質で選ぶことが大切です。
| 種類・品種 | アミロース | 炊き上がり | 寿司には |
|---|---|---|---|
| もち米 | ほぼ 0% | 強い粘りと伸び | 向かない(団子になる) |
| 低アミロース米(ミルキークイーンなど) | 約 10% | もちもちして柔らかい | 向かない(粘りすぎる) |
| コシヒカリ | 約 17〜18% | 粘りと甘みが強い | 水を控え、古米を混ぜて調整 |
| ササニシキ・ハツシモなど | 約 19〜20% | 粒が立ち、ほぐれやすい | 向く |
| 長粒種(インディカ米の多く) | 約 20〜30% | パラパラ | 向かない(握れない) |
まとめると、アミロースが少なすぎても多すぎても、寿司には向きません。17〜20%前後のうるち米が、ちょうどよい中間です。
品種の性質をもう一歩
精白米の約75%は、デンプンです。ハツシモは大粒で、粒がしっかりしています。ななつぼしは、粘りと硬さの釣り合いがよい品種です。どちらも冷めても味が落ちにくく、日本晴と並んで、アミロースは約19〜20%とされます。ササニシキはアミロースがやや多く、粒離れのよさはここから来ます。ミルキークイーンのアミロースは10%前後です。品種の数値は目安で、産地や年によって変わります。最後は、自分の店の合わせ酢とネタに合わせて決めます。米と酢は、一対で考えます(第8章)。
7.2 新米と古米
その年に収穫した米を新米、前の年に収穫した米を古米と呼びます。米は保管しているあいだに、中の成分が少しずつ変わり、粒が硬くなっていきます。水分が抜けるから硬くなる、と思われがちです。けれども主な原因は、成分の変化のほうです。
新米は粒が柔らかく、水をよく吸います。ふつうの水加減で炊くと、ベタつき、粒が潰れやすくなります。そのうえ合わせ酢を吸い込む余地が小さく、酢が表面に残って、水っぽいシャリになりやすいとされます。
古米は粒が硬いので、炊いても形が崩れにくくなります。炊くときには、水をよく吸います。そのため合わせ酢も中までしっかり吸い、ベタつかない、と職人は説明します。
多くの寿司店が新米と古米を混ぜて使うのは、このためです。混ぜる割合は、新米7対古米3から、5対5まで、店によって幅があります。新米だけで炊くなら、水をふつうより5〜10%減らします。古米は水を吸うのに時間がかかるので、浸水を長めにとります。割合を変えたら、浸水時間と水加減を必ず見直します。
古米化と、吸い込む余地
米は収穫の後、玄米の水分を約15%まで乾かして保管されます。月日がたつと、脂質・デンプン・タンパク質や酵素が少しずつ変わります。これを古米化といい、米粒の組織は硬くなります。保管中に水分もわずかに抜けますが、硬くなる主な原因は古米化です。
新米は、米粒の中身である胚乳が柔らかく、水を吸いやすいのです。古米は、炊くときに吸う水の割合が新米より高くなることが知られています。この吸い込む余地の大きさが、古米をあえて混ぜる理由です。合わせ酢を中まで吸い込み、味がなじんでベタつかない、と職人は説明します。
ただし古米は、保管が悪いと糠の層の脂質が傷み、古米のにおいが出ます。15℃以下の低温倉庫で保管されたものを選びます。
米の保管
一般の白米は、玄米の重さの約90〜92%まで表面を削った米です。この削る作業を精米といいます。精米した米は、日がたつほど味が落ちます。精米日の近いものを、少しずつ仕入れます。
保管の敵は、温度・湿気・虫・酸化の四つです。15℃以下が理想で、虫は20℃以上で活発になります。密閉できる容器に入れて、涼しい場所に置きます。米びつは、空になるたびに洗って乾かします。新しい米を、古い米の上に継ぎ足してはいけません。古い米がいつまでも底に残るからです。第5章で学んだ先入れ先出しと、同じ考え方です。
精米の度合いと、味が落ちる速さ
玄米の表面を覆う糠層(ぬかそう)は、脂質を多く含みます。酸化とにおいの主な原因です。寿司米では、玄米の重さの88〜90%まで磨く店もあります。磨くほど糠のにおいと雑味が減りますが、削りすぎると粒が割れやすくなります。
精米の後は、脂質の酸化が始まります。2〜3週間を過ぎると、味が落ちます。夏の厨房のように30℃を超える所に袋のまま置けば、1か月で味が落ちます。水分が多い米、目安として16%を超える米は、カビが生えやすくなります。コクゾウムシなどの虫は、20℃以上で活発になります。
7.3 洗米 ― 研ぐのではなく洗う
洗米の目的は、米の表面に残った糠と細かい粉を落とすことです。昔の精米は粗かったので、米どうしをこすり合わせて「研ぐ」必要がありました。今の精米機は、糠をほとんど取り除きます。強く研ぐと粒が割れ、割れ目からデンプンが溶け出してベタつきます。今は、「研ぐ」のではなく「洗う」と考えます。
乾いた米は、最初に触れた水をいちばん勢いよく吸います。乾いたスポンジを水に入れると、一気に吸い込むのと同じです。最初の水には、糠のにおいが溶け出しています。ぐずぐずしていると、そのにおいまで米が吸ってしまいます。だから最初の水は、注いだらすぐに捨てます。
ぬるま湯で洗ってはいけない理由も、同じところにあります。温かい水では、吸水が一気に進みます。糠のにおいや濁った水まで、米が吸い込みます。水を含みすぎた粒は表面が崩れやすく、炊き上がりがベタつく原因になります。なお、デンプンが糊のように変わり始めるのは60℃前後からです。ぬるま湯で、米の表面が煮えてしまうわけではありません。
- 量る 米は重さで量ります。1升は約1.5 kg です。
- 最初の水 たっぷりの冷たい水を一気に注ぎ、2〜3回かき混ぜて、10秒以内に捨てます。
- 洗う 米がひたる程度の水で、指を立てて軽く円を描くように10〜20回かき回し、濁った水を捨てます。これを2〜3回くり返します。うっすら濁る程度で止め、透明になるまでは洗いません。
- すすぐ さっと流水ですすぎます。最初の水から3〜5分以内に終えます。長くかけるほど、米は濁った水を吸い、割れます。
冷たい水で、短く、やさしく。これが洗米の基本です。
7.4 浸水とザル上げ
浸水は、米粒の中心まで水を届けるための工程です。米がふっくら炊けるには、水と熱の両方が要ります。水が中心まで届いていない米を炊くと、表面のデンプンだけが先に糊のように変わり、膜を作ります。この膜が、中へ水と熱が入る道をふさぎます。こうして芯の残った「生煮え」のご飯になります。
米は、水に浸けてから30分ほどで急速に水を吸います。約2時間で、ほぼいっぱいになります。このとき重さは約20〜25%増えます。水温が低いほど、ゆっくり吸います。高い水温で長く浸すと、粒の表面が崩れて味が落ちます。だから浸水は冷たい水で行い、時間で調整します。目安は、水温25℃前後の夏で30分〜1時間、水温5〜10℃の冬で1〜2時間です。古米は、さらに30分ほど長くとります。
ザル上げは長く置かない
浸水した米はザルに上げて、外側の水を切ります。水加減を正確にするためです。ところが、ザルに上げたまま長く置くと、米粒の表面だけが乾いて縮みます。中は水を含んで膨らんだままなので、その差でひびが入ります。これを胴割れ(どうわれ)といいます。胴割れした米を炊くと、ひびからデンプンが流れ出します。ベタついた、粒の崩れたご飯になります。
ザル上げは、15〜30分で釜に移すのが目安です。乾いた厨房では、もっと短くします。固く絞った濡れ布巾をかけて、乾燥を防ぎます。
水加減の出発点
寿司用のシャリは、ふつうのご飯より硬めに炊きます。米は浸水で、すでに重さの約20〜25%の水を吸っています。そのため、ふつうの炊き方より少ない水で足ります。職人の間では、ザル上げした米の重さの1.0〜1.1倍の水を、出発点とすることがあります。ただし水加減は、釜と火力で大きく変わります。自分の店の基準を決めて記録し、炊き上がりを見て直していきます。
7.5 水 ― 軟水と硬水
米は浸水で、重さの2割以上の水を吸います。炊くときには、さらに水を吸います。水の質は、そのままシャリの質になります。
いちばん影響が大きいのは硬度です。水に溶けているカルシウムとマグネシウムの量のことです。多い水を硬水、少ない水を軟水といいます。WHO、つまり世界保健機関の区分では、水1リットルあたり60 mg までが軟水です。この量は、炭酸カルシウムに置きかえて数えます。60〜120 mg が中程度の硬水、120 mg を超えると硬水です。日本の水道水の多くは100 mg 未満で、軟水から中程度の硬水にあたります。
硬水で炊くと、ご飯は硬く、パサつきます。カルシウムが米の組織を硬くして、水が中まで入りにくくなるため、と説明されています。くわしい仕組みには、まだはっきりしない点があります。マグネシウムは、苦みも加えます。軟水なら、水が素直に米に入り、ふっくら炊けます。
硬度とペクチン、水の性質
WHO の区分には、続きがあります。120〜180 mg が硬水、180 mg 以上が非常な硬水です。日本の水道では、硬度の水質管理目標値を、1リットルあたり10〜100 mg としています。
硬水で硬く炊ける理由は、次のように説明されます。米の細胞の壁には、ペクチンという成分があります。カルシウムは、ペクチンどうしを橋渡しするように結びつけ、組織を硬くします。壁が硬くなると水が中まで入りにくくなり、糊化が進みにくくなります。ただし、この仕組みは豆や野菜で確かめられたものです。米の細胞の壁にはペクチンが少なく、米でどこまで効いているかは、確かめきれていません。
水の pH は、ほぼ中性が基本です。弱いアルカリ性の水ではやや柔らかく、酸性の水では硬めに炊けます。軟水器は、イオン交換樹脂という材料で、カルシウムとマグネシウムをナトリウムに置きかえる道具です。塩素のにおいが強い水は、浄水器を通します。
7.6 炊飯と蒸らし
生の米のデンプンは、分子がぎっしり並んだ硬い状態です。水も入り込めません。水と熱が加わると、この並びがほどけます。すき間に水が入り込み、デンプンは水を抱えて膨らみます。こうして、柔らかく粘りのある状態に変わります。これが糊化(こか)です。アルファ化ともいいます。水で溶いた片栗粉を火にかけると、とろりと透明になります。これと同じ変化です。米のデンプンは60℃前後から糊化し始めます。中心まで糊化させるには、98℃以上を20分ほど保つ必要があります。
火加減とカニ穴
寿司店では、沸騰までを速めにします。沸騰したら、デンプンを煮崩さない程度に強く炊きます。これが多くの店の考え方です。一般の炊飯では、沸騰までの時間は10分ほどが適当とされます。寿司用のシャリは、あとで合わせ酢を吸わせるので、ふつうのご飯より水を控えて硬めに炊きます。水加減は釜と火力で大きく変わるので、自分の店の基準を決めて記録します。
よく炊けた釜の表面には、直径数ミリの穴がいくつも開いています。これをカニ穴といいます。強い火で釜の底に生まれた蒸気の泡が、米の層を押し分けて上がってきた通り道です。釜全体が勢いよく沸騰し、底から上まで蒸気が通った証拠です。火が弱かったり、水が多すぎたりすると、できにくくなります。
蒸らしと釜
火を止めたら、蓋をしたまま10分前後置きます。余熱と蒸気で、芯まで糊化が進みます。表面の余分な水分も、米に吸われます。蒸らしすぎると、酢を打つのにちょうどよい熱さを逃します。10分前後で切り上げ、熱いうちに飯台へ移します(第9章)。
寿司店の多くは、ガス釜を使います。直火で強い火力が出せ、粒の立ったシャリになりやすいからです。IH 炊飯器は温度の管理が正確で、毎回同じように炊けます。圧力式は柔らかくなりやすいので、水を減らします。炊く量は、釜の容量の6〜8割が目安です。満杯にすると、米が自分の重さで潰れます。
炊き上がりの見極め
表面にカニ穴があり、粒の輪郭がはっきりしていて、水の膜がないこと。しゃもじで返すと、底に水がたまっていないこと。米が塊で持ち上がらず、ふわりと崩れること。一粒つぶして、芯がないこと。これがよい炊き上がりです。柔らかすぎたら、水と浸水時間を減らします。芯が残ったら、浸水時間を増やします。カニ穴が出なければ、炊く量を減らしてみます。
糊化を分子の目で見る
生の米のデンプンを、ベータデンプンと呼びます。アミロースとアミロペクチンの分子が、水素結合という弱い結びつきで、規則正しくぎっしり並んでいます。水も、消化の酵素も入り込めない硬い構造です。
ここに水と熱が加わると、分子どうしの水素結合が切れます。できたすき間に水の分子が入り込み、デンプンは水を抱えて膨らみます。これを膨潤(ぼうじゅん)といいます。規則正しい並びはほどけ、柔らかく粘りのあるアルファデンプンに変わります。糊化とは、水と熱で分子どうしの水素結合が切れ、すき間に水が入って膨らむ変化です。
火の速さと釜の違い
沸騰までが遅いと、米の中のアミラーゼという酵素が働く温度に、長くとどまります。アミラーゼはデンプンを糖に変える酵素です。甘みは増しますが、粒の立ちは弱くなるとされます。粒の立つシャリには、速めの沸騰が合います。
ガス釜は、直火で短い時間に強い対流を起こせます。圧力式は、沸点を100℃より上に上げて、短い時間で芯まで糊化させます。羽釜は熱をため込む力と対流が強く、カニ穴が最もよく出ます。火を止めた直後は、米粒の表面に水が残り、中の糊化もまだ終わっていません。蒸らしは一般に10〜15分ですが、寿司店では酢を打つ熱さを残すため、10分前後にとどめます。
昆布や酒を少し入れて炊く店もあります。ただし昆布は、ぬめりの成分であるアルギン酸で、粘りが増すことがあります。入れるなら、沸騰する前に取り出します。炊き上がりは、噛んで甘みとわずかな弾力があることも確かめます。釜の容量の6〜8割で炊くと、最も対流がよくなります。
7.7 デンプンの老化 ― 冷めたご飯が硬くなる理由
糊化したアルファデンプンは、時間がたつと、分子どうしが再び水素結合で結びつきます。水を追い出し、硬く並び直します。これを老化といいます。ベータ化ともいいます。老化は、糊化と逆向きの変化です。冷めたご飯が硬くぼそぼそになるのは、このためです。
老化が最も速く進むのは、0〜4℃、つまり冷蔵庫の温度です。この温度では、分子の動きがほどよく遅く、水もまだ凍っていません。そのため分子が並び直しやすいのです。冷蔵庫に入れたご飯が、翌日に硬くパサつくのはこのためです。−18℃以下の冷凍では、老化は進みにくくなります。60℃以上の保温でも遅くなりますが、乾燥と黄ばみが進みます。老化は、水分が30〜60%のときに最も速く進みます。ご飯の水分は約60%で、この範囲に入っています。
シャリを人肌、35〜37℃に保つ理由の一つは、この老化を遅らせるためです。老化したデンプンも、温め直せば、ある程度はまた糊化して柔らかくなります。冷やご飯を温めると柔らかくなるのと同じです。けれどもシャリを温め直すと、酢酸が飛びます。表面だけが糊化しすぎて、ベタつきます。だからシャリとしては、元に戻せません。シャリは「人肌で保ち、人肌のうちに使い切る」ものです。砂糖が老化を遅らせる理由は第8章、シャリの温度の管理は第9章で学びます。
この章のまとめ
- 寿司米は、粒が立ち、ほどよく粘り、冷めても硬くなりにくいうるち米を、銘柄ではなく性質で選びます。アミロースは約17〜20%が目安です。
- 古米は成分の変化で粒が硬く、炊くときに水をよく吸うので、合わせ酢もよく吸うとされます。新米は水を5〜10%減らすか、古米と混ぜます。米は15℃以下で密閉して保管し、古い米の上に継ぎ足しません。
- 洗米は「研ぐ」のではなく「洗う」。冷たい水で、短く、やさしく。最初の水はすぐ捨てます。
- 浸水は冷たい水で、夏30分〜1時間、冬1〜2時間が目安です。足りないと芯が残ります。ザル上げは15〜30分で、長く置くと胴割れします。浸水中の米や炊いた白飯を常温に放っておきません(セレウス菌)。
- 硬水は硬くパサついたシャリになります。海外では軟水器・RO の水・硬度60 mg 以下の水を使い、米も水も重さで量ります。
- 糊化は60℃前後から始まり、98℃以上で約20分。強い火で炊けた釜にはカニ穴ができます。蒸らしは10分前後で切り上げ、熱いうちに飯台へ移します。
- 糊化は、水と熱で分子どうしの水素結合が切れ、水が入って膨らむ変化です。老化は0〜4℃で最も速く、シャリは温め直しても戻らないので、人肌に保って使い切ります(一級)。
確認問題
問1 浸水を終えた米をザルに上げたまま、長い時間置いておきました。このとき起こりやすいこととして、正しいものはどれですか。
a 米がさらに水を吸い、ふっくら炊き上がる
b 米粒の表面だけが乾いて縮み、ひび(胴割れ)が入って、炊くとベタつく
c 水がよく切れるので、芯のないシャリになる
d デンプンが糊化して、粘りのあるシャリになる
e 古米と同じ性質になり、合わせ酢をよく吸う
答え:b
ザル上げのまま長く置くと、表面だけが乾いて縮みます。水を含んだ内側との差で、米粒にひびが入ります。これが胴割れです。炊くとひびからデンプンが流れ出し、ベタついた、粒の崩れたご飯になります。ザル上げは15〜30分で釜に移すのが目安です。d の糊化は、水と熱がそろって60℃前後から始まる変化で、ザルの上では起こりません。
問2 浸水を十分にしないで炊いたとき、米粒に起こることとして正しいものはどれですか。
a 中のデンプンが先に糊化し、表面が硬く残る
b 表面のデンプンが先に糊化して膜を作り、中へ水と熱が届かないため芯が残る
c アミロースが流れ出て、全体がベタつく
d 胴割れが起きて、米粒が崩れる
e カニ穴がたくさんでき、水っぽく炊き上がる
答え:b
浸水が足りない米は、表面にしか水がありません。そのため表面が先に糊化して膜になり、中へ水と熱が入る道をふさいで芯が残ります。いわゆる生煮えです。d の胴割れは、ザル上げのまま長く置いたときに起きる、別のことがらです。
問3 炊いたシャリの老化について、正しいものはどれですか。
a 老化は60℃以上で最も速く進むので、保温はしないほうがよい
b 老化は0〜4℃で最も速く進むので、シャリは冷蔵せず人肌に保ち、そのうちに使い切る
c 老化したシャリは、温め直せば酢の味も食感も元どおりになる
d 老化は、水と熱で分子どうしの水素結合が切れて膨らむ変化である
e −18℃以下で冷凍すると、老化は最も速く進む
答え:b
老化は、糊化したデンプンが再び水素結合で結びつき、硬く並び直す変化です。冷蔵庫の温度である0〜4℃で最も速く進みます。c は誤りで、温め直すと酢酸が飛び、表面だけが糊化しすぎてベタつくので、シャリとしては戻りません。d は糊化の説明です。−18℃以下の冷凍や60℃以上の保温では、老化は遅くなります。

