
第I部 食の安全
第1章
世界に広がる寿司と衛生の現実
寿司は、生の魚に火を通さずに客の口へ運ぶ料理です。だから職人の小さな油断が、そのまま客の体に届きます。寿司は世界の料理になりましたが、安全に生で食べるための条件は、形と一緒には広がりませんでした。この章では、世界で起きていること、日本の寿司がなぜ生で食べられてきたか、海外の決まり、職人の責任を学び、第I部の土台を作ります。
この章で学ぶこと
- 世界に広がった寿司で何が起きているか、暑い国や屋台で衛生が崩れるしくみを説明できる
- 日本の寿司が安全な生食として成り立ってきた四つの条件を挙げられる
- 食中毒で命を落としやすい人と、「迷ったら捨てる」という職人の責任を説明できる
- 米国・欧州・日本の、生で出す魚の冷凍の基準を、温度・時間と、温度をどこで測るかの条件つきで述べられる(一級)
- 米国の素手の禁止と例外の手続き、酢飯の pH の管理と時間の管理の考え方を説明できる(一級)
1.1 世界に広がった寿司 ― 誰が、どこで握っているか
寿司が日本の外で広く食べられるようになったのは、1970年代以降です。農林水産省の推計では、海外の日本食レストランは約18.1万店(2025年)あります。
広がるにつれて、握る人も売り方も変わりました。日本で修業した職人は、ごく一部です。多くは現地の調理人や、別の料理から移ってきた人、短い講習だけで店を開いた人です。売り方も、専門店だけではありません。スーパーのパック寿司、屋台、届くまで1時間以上かかる宅配でも売られます。寿司は「握ってすぐ食べる」料理から、「作ってから時間がたって食べる」料理に変わったのです。
協会は、この広がりを否定しません。問題は別のところにあります。「生の魚を酢飯にのせる」という形は、簡単にまねできます。しかし、その形を安全に支えていた条件は、一緒に運ばれませんでした。その条件が何かは、1.3で学びます。
広がり方の数字
寿司はまず北米で広がり、1990年代には欧州、2000年代以降はアジア、中東、中南米、アフリカへ広がりました。農林水産省の推計では、海外の日本食レストランは、2006年の約2万4千店から、2023年には約18万7千店に増えました。2025年は約18万1千店です。20年足らずで7倍を超える数になったことになります。作り手の数が急に増えれば、訓練を受けないまま握る人も増えます。
1.2 暑い国・屋台・冷蔵が足りない場所で起きること
屋台と夜市で起きていること
暑い国の屋台や夜市では、次のような光景が珍しくありません。気温35℃の中、溶けかけた氷の上に生の魚が並びます。朝に合わせた酢飯が、夕方まで売られます。一度も冷凍していない魚が、寄生虫の確認もなく生で出されます。屋台には安定した電気がなく、魚は溶けかけた氷の上か、外の空気にさらされます。
水道の水が飲めない土地では、その水から作った氷で魚を冷やすこともあります。氷は、もとの水と同じだけしかきれいではありません。汚れた水から作った氷は、それ自体が菌やウイルスを運びます。冷やしているつもりで、汚れを魚に塗っていることになるのです。
世界で、どれだけの人が倒れているか
世界保健機関(WHO)が2026年に公表した推計があります。2021年の1年間に、食品が原因の病気にかかった人は、世界で約8億6,600万人でした。亡くなった人は約152万人にのぼります。寿司だけの統計はありません。しかし、暑い国の屋台や持ち帰りの寿司は、温度と時間の管理を誤れば食中毒を起こし、命に関わる事故にもなりえます。
日本も、昔から安全だったわけではない
1990年代の日本では、刺身や寿司などの魚介類が原因の腸炎(ちょうえん)ビブリオの食中毒が多発しました。腸炎ビブリオは、海水にすむ食中毒菌です(第2章・第3章)。1998年には、腸炎ビブリオの食中毒が839件に達しました。
2001年に、生で食べる魚介類を「10℃以下で保存する」などの基準が定められました。それから、事件の数は大きく減りました。いま、生食用の魚を10℃以下で保つこと、持ち帰りの寿司は保冷剤で10℃以下に保ち、食べる時間を伝えることが当たり前になっています。これは、この経験から生まれた決まりです(第5章)。いま海外の多くの地域は、日本が1990年代に通った道を歩いています。
温度の連鎖が切れると、何が起きるか
日本では、魚は漁船の上で氷に埋められます。市場でも仲卸でも、氷と低温の庫で運ばれ、店の冷蔵庫に入ります。この流れが切れている地域では、「朝獲れ」の魚でも、炎天下の荷台で数時間を過ごします。店に着く前に、魚の温度が30℃を超えることもあります。
酢飯の作り置きにも、科学の上の危なさがあります。酢の酸は、菌が増えるのを遅らせますが、止めはしません(第2章・第6章)。そして米には、加熱に耐える芽胞(がほう)を作る細菌が付いています。芽胞は、熱に強い殻をかぶって眠った状態の菌です。炊いても生き残り、ぬるいご飯の中で目を覚まして増え、毒素を作ります(第3章)。
海が温かいほど危ない菌がいる
腸炎ビブリオは、海の水温がおおむね15℃を超えると、魚介の表面から見つかりやすくなります。水温が20℃を超える夏には、急に増えます。日本で腸炎ビブリオの食中毒が夏に集中するのは、このためです。熱帯の海辺では、一年中が「日本の夏」です(第3章)。
数字の背景
WHO の推計では、5歳未満の子どもが、食品による健康被害全体の約3割(29%)を負っています。亡くなった5歳未満の子どもは、約14万3千人です。
重い病気になる菌もいます。腸管出血性大腸菌O157は、幼児に溶血性尿毒症症候群という重い腎臓の病気を起こします。リステリアは、妊婦に流産や死産を起こします(第3章)。いちばん弱い人を基準にするのは、こうした病気があるからです。
日本の1990年代の腸炎ビブリオは、細菌による食中毒の事件数で、サルモネラ属菌と首位を争っていました。年によって順位は入れ替わり、1998年の839件が最も多い年でした。
1.3 日本の寿司はなぜ生で食べられてきたのか
生の魚をふだんから食べる文化は、世界でも多くありません。日本でそれが成り立ってきたのは、偶然ではありません。少なくとも四つの条件が重なっていたからです(図1-1)。四つとは、低温の流通、短い提供時間、酢飯の酸と塩、職人の訓練です。
- 低温の流通 漁船の上で、魚は氷に埋められます。活け締めにして、海水の氷で冷やすこともあります。そのあと市場、仲卸、保冷車、店の冷蔵庫と、魚はほぼずっと10℃以下、多くの場面で0〜5℃で運ばれます。菌が増えない温度で旅をするのです。この流れをコールドチェーンと呼びます。獲ってから出すまで、低温を切らさない流通のしくみのことです。
- 短い提供時間 江戸前の寿司は、その日に仕込んだネタをその日に握ります。握った寿司は、数十秒で客の口に入ります。菌が増えるには時間がかかります(第2章)。カウンターは、作ってから食べるまでの時間を、できるだけ短くするしくみでもあります。寿司は、ネタの鮮度だけでなく、時間を売る料理なのです。
- 酢飯の酸と塩 合わせ酢の酸が、酢飯の中で菌を増えにくくします。塩と砂糖も、菌が使える水分をわずかに減らします。わさび・ガリ・お茶の働きは、あくまで補助です(第6章)。
- 職人の訓練 鮮度を見る目、内臓を素早く抜く手順があります。汚れ仕事ときれいな仕事でまな板と包丁を分ける習慣、ネタケースから必要な分だけ出す所作、まな板を洗い流し、手を酢で清める動作もあります。
職人の訓練は、弟子が親方のそばで働く中で、体に刻まれてきました。理由を言葉にしないまま、受け継がれてきたのです。言葉にされなかったからこそ、海外には伝わりませんでした。本書が「なぜ」を書くのは、このためです。
日本でも、安全は自動ではない
四つの条件がそろっていても、日本の寿司が完全に安全なわけではありません。厚生労働省の統計では、寄生虫のアニサキスが、2018年から2024年まで、食中毒の事件数で第1位でした。2025年も、ノロウイルスに次ぐ第2位です(第2章・第3章)。「新鮮だから大丈夫」は、安全の保証になりません。
四つの条件のうち一つでも欠ければ、生食の安全は崩れます。海外では、二つも三つも欠けていることがよくあります。だから海外で握る職人の原則は、「日本と同じ」ではなく、「日本より厳しく」です。
弱い守りを重ねる ― ハードル理論
酢飯の酸を中心にした守りには、名前があります。ハードル理論です。一つ一つは弱い守りを、いくつも組み合わせて菌を抑える考え方です。陸上のハードル走で、低いハードルでも何台も並べば、走る人は速く進めません。菌にとっても同じです。
合わせ酢は、酢飯の pH を下げます。pHは酸の強さを表す数字で、7が中性、小さいほど酸っぱいことを示します。わさびの辛味の成分アリルイソチオシアネートには、実験室で菌を抑える働きが報告されています。わさびは、ネタとシャリの境目に挟まれます。ほかに、ガリの酢、熱いお茶、手を清める手酢があります。ただし、わさびやお茶の働きは、菌を増えにくくする補助にとどまります。どれも単独では弱く、酢飯の酸を中心に重ねることで、菌が増えるのを多方向から抑えます。なれずし、漬物、サワードウのパンなど、酸で守る食べ物は世界中にあり、同じ原理です(第6章)。
アニサキスと「新鮮なら安全」の誤り
日本近海のアニサキスには、いくつかの種類がいます。研究では、太平洋側に多い種類は、魚が死んだ後に内臓から身へ移りやすいと指摘されています。日本海側に多い種類は、内臓にとどまりやすいとされます。どの海の魚でも、身に入っていることはありえます。内臓を早く取るのは大事ですが、それだけでは足りません。冷凍か加熱、そして目で見て取り除くことが必要です(第3章・第12章)。
1.4 海外の決まり ― 日本と違う三つのルール
海外で寿司を握る職人が最初にぶつかるのが、日本にはない決まりです。代表的な三つを見ます。生で出す魚の冷凍、素手で触れることの禁止、酢飯の管理です。
生で出す魚は冷凍しなければならない
米国には、FDA Food Codeという規範があります。米国食品医薬品局(FDA)が示す、飲食店向けの衛生の規範です。各州や郡がこれを採り入れて、条例にします。この規範は、生や生に近い状態で出す魚に、寄生虫を殺すための冷凍を義務づけています。条件は三通りです。
- −20℃以下で7日間 168時間、保ちます。7日間は、魚が凍るまでの時間も含めた合計の時間です。
- −35℃以下で15時間 −35℃以下で凍らせ、−35℃以下で15時間保ちます。
- −35℃で凍らせて、−20℃で24時間 −35℃以下で凍らせ、−20℃以下で24時間保ちます。
FDA の温度は、冷凍庫の中の温度で数えます。記録は、提供した後90日間保存します。二枚貝、一部の種類のマグロ、寄生虫のいない配合飼料だけで育てた養殖魚などは、この義務から外れます。
欧州連合(EU)の規則853/2004も、生で食べる水産物に冷凍を求めています。条件は、製品のすべての部分で−20℃以下を24時間以上、または−35℃以下を15時間以上です。
日本の厚生労働省は、アニサキス対策として、−20℃で24時間以上の冷凍を示しています。加熱なら70℃以上、60℃なら1分です。新鮮な魚を選び、内臓を早く取り、目で見て取り除くことも求めています。ただし、日本ではこの冷凍は呼びかけで、法令上の義務ではありません。冷凍していない魚を生で出すことができます。ここが、日本と欧米のいちばん大きな違いです。
表1-1は、三つの基準を並べたものです。米国は冷凍庫の中の温度で7日間など、EU は製品のすべての部分で−20℃以下24時間以上など、日本は−20℃で24時間以上の呼びかけです。
| 基準 | 温度と時間 | 条件・例外 |
|---|---|---|
| 米国 FDA Food Code | −20℃以下で7日間(168時間)/−35℃以下で凍結し、−35℃以下で15時間/−35℃以下で凍結し、−20℃以下で24時間 | 義務。温度は冷凍庫の中の温度(7日間は凍るまでを含む合計の時間)。記録を提供後90日間保存。二枚貝、一部のマグロ類、配合飼料だけで育てた養殖魚などは除外 |
| EU 規則853/2004 | −20℃以下で24時間以上/−35℃以下で15時間以上 | 義務。「製品のすべての部分で」。寄生虫の心配のない養殖魚は例外 |
| 日本 厚生労働省 | −20℃で24時間以上(または70℃以上、60℃なら1分の加熱) | 呼びかけであり、法令上の義務ではない。温度を測る場所の定めはない。目で見て取り除くこと、内臓を早く取ることと併せて行う |
素手で、そのまま食べる食品に触れてはならない
FDA Food Code は、そのまま食べられる食品に、素手で触れることを禁じています。これ以上火を通さずに食べる食品のことです。かわりに、トング、紙、使い捨ての手袋などを使います。握り寿司は、酢飯もネタもこれに当たります。米国の職人の多くが手袋で握るのは、この決まりのためです。
ただし、例外の手続きがあります。保健当局に前もって申請し、承認を受ければ、素手での調理が認められます。承認には、複数の管理のしかたを書いた手順書が必要です。手洗いの訓練の記録、2度洗いや爪ブラシの使用、手洗い後の手指の消毒、体調の悪い人を働かせない方針などです。つまり米国の制度は、「素手は不衛生だから禁止」ではありません。「素手で安全を保つなら、それを証明しなさい」というしくみです。なぜ素手で握れるのかは、第6章で学びます。
酢飯は pH か時間で管理する
日本の寿司屋では、酢飯を人肌、約35〜37℃に保って握ります。しかし米国の決まりでは、炊いたご飯はTCS 食品です。菌が増えないように、時間と温度の管理が必要な食品のことです。TCS 食品は、5℃以下か57℃以上で保たなければなりません。人肌の酢飯をそのまま置いておくのは、原則として違反になります。
この矛盾を解く道は二つあります。一つめは酸性化です。合わせ酢で酢飯の pH を基準の値より下げ、保健当局の特別な承認を受けます。そうすれば酢飯は TCS 食品から外れ、室温で置けるようになります。基準の値は地域で違います。FDA Food Code の2022年版は、管理の基準の例として pH 4.2未満を挙げています。4.2以下を求める保健当局がある一方、4.6以下とする地域もあります。店は管理の計画を出し、炊くたびに pH 計で測って記録します。二つめは時間の管理です。冷蔵庫から出した時刻、または炊いて合わせた時刻を書きます。4時間を過ぎたら残りを捨て、時刻と廃棄を記録します。
なぜ4.6や4.2なのでしょう。pH 4.6は、ボツリヌス菌が増えられる下限とされる値です。ボツリヌス菌は、加熱に耐える芽胞を作り、命に関わる毒素を出す菌です。しかし、米に付くセレウス菌は、pH 4.3あたりまで増えます。サルモネラや黄色ブドウ球菌は、それより低い pH でも増えることがあります。酢飯に4.2前後を求める地域があるのは、このためです(第2章・第9章)。
欧米の決まりに共通するのは、HACCP(ハサップ)に基づく計画と記録です。HACCP は、危ないところを洗い出し、とくに大事な管理の点を決めて、見張り、記録する衛生管理の方法です。日本でも2021年6月から、原則としてすべての食品等事業者に、HACCP に沿った衛生管理が義務づけられました。検査官が見るのは、職人の腕ではなく記録です(第5章)。
1.5 職人の責任 ― 迷ったら捨てる
食中毒は「確率」で起きます。危険温度帯に2時間置いた魚を出しても、誰も具合が悪くならないことはよくあります。この「今まで大丈夫だった」という経験が、いちばん危ない先生です。条件がそろった日に、同じ手順が人を傷つけます。安全とは、事故が起きなかったことではありません。事故が起きないしくみが、毎日働いていることです。
日本の食中毒予防には、「つけない・増やさない・やっつける」という三原則があります。菌を食材につけないこと(第4章)。ついた菌を増やさないこと(第2章・第5章)。残った相手をやっつけること(第3章・第12章)。そして第6章では、素手で握るという寿司の中心の技が、この三原則とどう両立するかを学びます。第I部の各章は、この三つを寿司屋の仕事に当てはめたものです。
仕入れから客の口に入るまで、寿司のすべての段階に手を触れるのは職人だけです。職人は最後の砦です。そこで止められなかった危険は、もう誰にも止められません。判断の原則は一つです。迷ったら捨てる。捨てた食材の原価は、一人の客が入院する代償よりずっと安いのです。店の信用を失う代償とは、比べものになりません。
この章のまとめ
- 寿司は1970年代以降に世界へ広がり、海外の日本食レストランは約18.1万店(2025年)。作り手も売り方も変わり、「作ってから時間がたって食べる」料理になった。
- 暑い国や屋台では、溶けかけた氷、汚れた水から作った氷、作り置きの酢飯で食中毒が起きる。WHO の推計(2026年公表、2021年の値)では、食品が原因の病気で年に約152万人が亡くなっている。
- 日本も1990年代に腸炎ビブリオが多発し、2001年の「生食用の魚介類は10℃以下で保存」などの基準で大きく減った。
- 日本の寿司の安全は、低温の流通、短い提供時間、酢飯の酸と塩、職人の訓練の四つに支えられてきた。わさびやお茶は補助。海外では「日本より厳しく」。
- 衛生の基準は「いちばん弱い人」に置く。食中毒は確率で起き、職人は最後の砦。迷ったら捨てる。
- 冷凍基準は、FDA が冷凍庫の中の温度で−20℃以下7日間など、EU が製品のすべての部分で−20℃以下24時間以上など、日本は−20℃で24時間以上(呼びかけ。本書は中心温度で守る)。(一級)
- FDA は素手での接触を禁じるが、承認された手順書があれば例外が認められる。酢飯は酸性化(地域により pH 4.6以下または4.2以下)か、4時間の時間管理で扱う。(一級)
確認問題
問1 日本で、生の魚を使う寿司が安全な食文化として成り立ってきた理由として、最も適切なものはどれですか。
a 日本近海の魚には寄生虫がいないため
b 新鮮な魚には細菌が付かないため
c 低温の流通、短い提供時間、酢飯の酸と塩、職人の訓練という条件が重なっていたため
d 醤油の塩分が、すべての食中毒菌を殺すため
e 日本の気候が一年中涼しく、細菌が増えにくいため
答え:c
生食の安全は、四つの条件が重なって成り立ってきました。a は誤りで、アニサキスは2018〜2024年に食中毒の事件数で第1位でした。b も誤りで、新鮮な魚でも皮やエラや腸には細菌がいます。d は誤りで、醤油くらいの塩分では菌は死にません。e も誤りで、日本の夏の調理場は、菌がよく増える温度になります。
問2 寿司の衛生について、職人の考え方として正しいものはどれですか。
a これまで食中毒が出ていない手順なら、これからも安全である
b 衛生の基準は、健康な大人が食べて大丈夫かどうかで決める
c 海外でも、日本と同じやり方を守っていれば十分である
d 衛生の基準は、いちばん弱い人が食べても大丈夫なところに置き、迷ったら捨てる
e 氷の上に置いてあれば、氷が溶けきっていても魚は安全である
答え:d
食中毒で命を落としやすいのは、乳幼児、高齢者、妊婦、抵抗力の落ちた人です。職人は客の体調を知ることができないので、いちばん弱い人に基準を置きます。a は誤りで、食中毒は確率で起き、条件がそろった日に起きます。b は基準が甘すぎます。c は誤りで、海外では条件が欠けていることが多く、「日本より厳しく」が原則です。e も誤りで、氷が溶けきった魚は危険温度帯に入りかけています。
問3 米国の FDA Food Code が、生で出す魚の寄生虫対策として定める冷凍の条件として、正しいものはどれですか。
a −18℃以下で24時間保つ
b −20℃以下で7日間(168時間)保つ
c −10℃以下で7日間保つ
d 酢に30分以上漬けてから、−20℃で1時間保つ
e −35℃以下で15分間保つ
答え:b
FDA Food Code の条件は三通りです。−20℃以下で7日間、−35℃以下で凍らせて−35℃以下で15時間、−35℃以下で凍らせて−20℃以下で24時間です。温度はどれも冷凍庫の中の温度です。a は家庭用冷凍庫くらいの温度で、−20℃に届かず、時間も足りません。c は温度が高すぎます。d は、酢では寄生虫は死なず、時間も足りません。e は、15「時間」であって15分ではありません。

