第V部 調味料と薬味
第21章
わさび・海苔・ガリ・茶
わさび、海苔、ガリ、茶は、寿司の脇役に見えて、味と衛生の両方を支える仕組みそのものである。わさびの辛味がなぜ数分で消えるのか、海苔がなぜ炙ると緑になるのか、生姜をなぜ絞ってから漬けるのか、茶がなぜ口をリセットするのか。本章では、この四つを化学と現場の運用の両面から扱う。
この章の到達目標
- 本わさびと西洋わさびを見分け、辛味が生まれて消える仕組みを説明できる
- わさびを提供直前におろし、ネタとシャリの間に挟む理由を二つの観点から説明できる
- 海苔の表裏と炙りによる色変化の理由を説明し、正しく保存できる
- ガリの仕込みで湯通し後に絞る理由を、組織の吸い込みと拡散から説明できる
- 上がりのカテキンの働きと、茶の温度・濃さ・器の意味を説明できる
- 薬味をマスキングと対比効果の理論で使い分けられる
21.1 わさび ― 種類と選び方
本わさびはアブラナ科ワサビ属の日本原産の植物で、使うのは根茎(地下茎)である。年間を通じて 10〜15℃前後の湧水が流れる沢で育てたものを沢わさびと呼び、太く締まった根茎が採れる。主産地は静岡(伊豆天城・御殿場)と長野(安曇野)で、品種では成長が遅く香りと辛味の強い「真妻」が最上とされる。日陰の畑で育てる畑わさびは根茎が太らず、葉と茎がわさび漬けや練りわさびの原料になる。
西洋わさび(ホースラディッシュ)は同じアブラナ科の別属で、根は白く、辛味の成分は本わさびと同じ系統だが、香りが乏しく辛味だけが強い。北海道では「山わさび」として親しまれる。市販の粉わさびやチューブの練りわさびの多くは西洋わさびを主原料に緑色に着色したもので、日本では業界の自主基準により、本わさびが 50% 以上なら「本わさび使用」、50% 未満なら「本わさび入り」と表示される。寿司屋が「本わさび」と言って出すなら、根茎をその場でおろすことが前提である。
根茎を選ぶときは、全体が鮮やかな緑で締まって重く、葉の付け根の跡(茎側の凹凸)の間隔が狭いものを選ぶ。間隔が狭いのはゆっくり育った証拠で、身が詰まり辛味と香りが濃い。黒ずみや内部の空洞(ス)がないかも確かめる。保管は、濡らした紙で包んで冷蔵し、紙を毎日替える。水に浸して毎日水を替える方法もある。おろし口が乾いて黒ずんだら薄く削り落としてから使う。
21.2 おろし方と辛味の科学
辛味が生まれる仕組み
わさびの根茎そのものは辛くない。細胞の中にはシニグリン(辛味のもとになる配糖体)とミロシナーゼ(シニグリンを分解する酵素)が別々の場所に隔離されて入っている。細胞が壊れて両者が細胞の水分の中で混ざり合うと、加水分解が起きてアリルイソチオシアネート(AITC)が生まれる。この反応に必要なのは水であって、空気(酸素)ではない。これが鼻に抜けるあの辛味と香りの正体である。つまり、わさびの辛味は「おろす」という行為が作り出す。細胞をどれだけ細かく、どれだけ多く潰せるかで、辛味と香りの量が決まる。
鮫皮おろしと「の」の字
職人が鮫皮おろし(サメの皮を板に貼ったおろし器)を使うのはこのためである。鮫皮の表面を覆う微細な凹凸は、金属のおろし金の刃よりはるかに細かく、細胞をミクロ単位ですり潰す。金属の粗いおろし金では繊維が切れるだけで細胞の多くが潰れずに残り、水っぽく辛味の弱いわさびになる。おろすのは茎側(葉の付け根があった上側)からで、茎側は香りと甘みが強く辛味がまろやか、根の先端側は辛味が強く筋張る。茎側の凹凸を包丁の背で削ぎ、皮は香りが皮のすぐ下に多いので剥かないか、ごく薄く剥く。鮫皮に根茎を垂直に当て、力を入れずに「の」の字を描くようにゆっくり回す。力任せに擦ると繊維が引きちぎれて口当たりが悪くなり、細胞は潰れない。ゆっくり円を描くほど細胞が細かく潰れ、より多くの細胞で酵素反応が進んで、きめ細かく辛味の立ったわさびになる。
辛味のピークは数分後とされる
AITC は揮発性が高く、分解もしやすい。辛味は、おろしてすぐよりも数分後(一般に約 3〜5 分後とされる)に、生成と揮発のバランスが最大になってピークを迎えると説明される。その後は生成が止まり揮発と分解が続くため、辛味と香りは抜けていき、苦味と青臭さが目立ってくる。空気に触れたまま 15〜20 分も放置すれば、辛味が抜けて苦味の目立つわさびになるとされる。ここから二つの原則が導かれる。第一に、わさびは提供直前におろす。開店前にまとめておろして冷蔵しておけば、密閉しても辛味と香りは時間とともに減り、おろしたての状態には戻らない。第二に、おろしたわさびは空気に触れさせない。小さな容器に入れて伏せるか、使う分だけおろして数分で使い切る。現場では、おろすときに砂糖をひとつまみ加えると辛味が立つと言われる。甘味が辛味を対比で強めることと、酵素反応を助けるためと説明されるが、職人の知恵として受け継がれているものである。
量の判断
AITC は水に溶けにくく油に溶けやすい。この性質が「ネタによって効き方が違う」理由である。トロやサーモン、ブリのように脂の多いネタでは、AITC が脂に溶け込んで舌や鼻への刺激が和らぐため、多めに効かせても辛さを感じにくい。白身は香りが繊細なので控えめにし、貝は水分が多くて脂がないため少量でも鼻に抜けるうえ、貝の甘みを消すのでごく少なくする。光り物は生姜に替えるか、わさびを少量にとどめる(第16章)。穴子や玉子、干瓢には使わない。同じ量を全部のネタに挟むのは、ネタを見ていない証拠である。
21.3 なぜ間に挟むのか ― 封じ込めと抗菌
握りでわさびをネタの上ではなくネタとシャリの間に挟むのには、二つの理由がある。第一は香りの封じ込めである。AITC は揮発性なので、ネタの上に乗せれば空気に触れて数分で抜ける。ネタとシャリで挟めば密閉され、口に入れて噛んだ瞬間に初めて解放されるため、辛味と香りが最も鮮やかな状態で届く。第二は衛生である。ネタとシャリの境界は、人肌のシャリと冷たいネタの間で温度差があり、水分がシャリからネタへ、ネタからシャリへ移動する。水分と栄養と中途半端な温度がそろう境界は、菌が増えやすい条件が重なる場所と考えられる。AITC には大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、腸炎ビブリオなどの増殖を抑える作用が実験で報告されており、ここに置くことで静菌の働きが期待できる。ただし一貫に挟む量での効果は補助的なものである。手酢の酢、シャリの酸、わさびの AITC、茶のカテキンは、温度管理と手洗いを前提に、素手で握る寿司の安全を補っている(第6章)。
21.4 海苔
養殖と等級
寿司に使う海苔はアマノリ類のスサビノリを養殖したもので、主産地は有明海(福岡・佐賀・熊本)、瀬戸内(兵庫・香川)、三河湾・伊勢湾(愛知・三重)である。秋に海水温が下がると網に種を付け、11 月下旬から 12 月に最初に摘むのが初摘み(一番摘み)である。芽が若く柔らかいため口溶けがよく、甘みと旨味が強い。同じ網から摘む回数が増えるほど葉は硬く厚くなる。摘んだ生海苔を洗い、刻み、簀(す)の上に抄いて乾かしたものが乾海苔(板海苔。全型は約 21 × 19 cm)で、これを焼いたものが焼き海苔である。等級は産地の共販で色の黒さと艶、厚み、穴や破れ、香りによって格付けされる。寿司屋では乾海苔を仕入れて提供直前に自店で炙る店と、焼き海苔を仕入れる店がある。
表と裏
海苔には滑らかで艶のある表と、簀に接して乾いたザラザラの裏がある。巻物では裏をシャリ側(内側)にする。粗い裏面はシャリの水分を素早く吸い、米粒を掴むアンカーになって型崩れを防ぐ。表を外側にすれば艶が見え、巻いた後に剥がれにくい。逆にすると、滑らかな表はシャリを滑らせて巻きが緩み、ザラザラの面が外に出て見た目も悪い。
炙ると緑になる理由
乾海苔は黒に近い紫色をしている。海苔には緑のクロロフィル(葉緑素)、赤のフィコエリスリン、青のフィコシアニン、黄のカロテノイドが共存し、混ざって黒く見える。火で炙ると、熱に弱い赤色のフィコエリスリンがタンパク質とともに変性・分解して消え、熱に強い緑色のクロロフィルが主に残るため、鮮やかな緑に変わる。同時に、アミノ酸と糖のメイラード反応で香ばしい香り(ピラジン類)が生まれ、磯の香りの主体であるジメチルスルフィドと重なる。炙りすぎると今度はクロロフィルまで分解して褐色になり、揮発性の香り成分が飛んで焦げ臭だけが残る。2 枚を裏面同士で重ね、表を遠火で数秒ずつ、色が緑に変わった瞬間に止める。海苔はグルタミン酸に加えてイノシン酸とグアニル酸も含み、旨味の相乗効果(第20章)がそれ自体の中で起きている。
保存と戻し方、切り方
海苔の敵は湿気と光と熱である。吸湿すると艶が消え、色が赤紫に褪せ、香りが抜けて口溶けが悪くなる。乾燥剤を入れた密閉容器に入れ、光の当たらない涼しい場所に置く。長期保存は冷凍が最もよいが、冷蔵庫や冷凍庫から出した海苔をすぐ開封すると結露して一瞬で湿気るので、袋のまま室温に戻してから開ける。湿気た海苔は弱火で炙るか電子レンジで数秒加熱すれば水分は飛ぶが、抜けた香りは戻らないので、巻物の内側や味付けに回す。切るときは乾いた包丁と乾いたまな板を使い、切ったら密閉する。
| 切り方 | 寸法の目安 | 用途 |
|---|---|---|
| 全型 | 約 21 × 19 cm | 太巻き |
| 半切 | 約 19 × 10.5 cm | 細巻き、手巻き |
| 1/4 | 約 10.5 × 9.5 cm | 小ぶりの手巻き |
| 6 等分の帯 | 約 19 × 3.5 cm | 軍艦巻き(シャリ玉の高さに合わせて幅を調整) |
21.5 ガリ
ガリは生姜の甘酢漬けで、名は噛んだときの音に由来するとされる。原料は 6〜8 月に出回る新生姜が最適で、繊維が柔らかく辛味が穏やかで、茎の付け根が紅い。貯蔵された根生姜(ひね生姜)は繊維が硬く辛味が強いので、使うなら薄く切り、湯通しを長めにする。
- 皮をこそげる 香りは皮のすぐ下に多い。包丁で厚く剥かず、スプーンで薄くこそげる。
- 薄切り 繊維に沿って 1 mm 前後にスライスする。厚いと甘酢が芯まで入らず、薄すぎると歯ごたえが消える。
- 塩を振る 軽く塩を振って 10〜15 分置き、余分な水分を引き出す。
- 湯通し たっぷりの熱湯で 10〜30 秒。辛味成分の一部を抜き、殺菌し、繊維を柔らかくする。長く茹でると香りも抜ける。
- 熱いうちに力強く絞る ザルに上げたら、熱いうちに両手で水気をしっかり絞り出す。
- 熱いうちに甘酢へ 絞った直後に甘酢に沈め、冷蔵で一晩以上なじませる。
なぜ絞ってから漬けるのか
湯通しした生姜を力強く絞ると、組織から水が押し出され、絞ったスポンジのように組織の中に隙間ができる。この直後に甘酢へ沈めると、押し縮められた組織が元の形に戻ろうとする力で甘酢を吸い込み、そこから拡散によって調味液が芯まで入っていく。湯通しで細胞膜はすでに壊れているので、ここで働くのは浸透圧ではなく、この吸い込みと拡散である。絞らずに漬ければ、組織に残った水が甘酢を薄め、味が入りにくい。熱いうちに漬けるのは、温度が高いほど分子の動きが速く、拡散が速いからである。
甘酢と色、役割
甘酢は米酢 200 mL に砂糖 60〜80 g、塩小さじ 1 弱が一つの目安で、酢の酸度は 4〜5% のものを使う。新生姜のガリが淡い桃色になるのは、芽や皮の下に含まれる紅色のアントシアニン(酸性で赤く発色する色素)が甘酢の酸で発色するためで、着色料ではない。根生姜は色素が少ないので薄い黄色にとどまり、市販の鮮やかな紅色は着色料によるものが多い。ガリの役割は、第一に口直しである。辛味と酸味が味蕾をリセットし、前の一貫の脂と香りを消す。第二に抗菌で、生姜のジンゲロールやショウガオールと酢の酸が菌の増殖を抑える働きを持つ。第三に消化の助けで、唾液と胃液の分泌を促す。
提供量と衛生
ガリは客が直接口に入れる食材である。盛るときは専用の箸かトングを使い、手で掴まない。客席から下げたガリを容器に戻したり、別の客に出し直したりしてはならない。カウンターのガリ入れには一度に出す量だけを小出しにし、営業後に洗浄する。甘酢は pH が低く菌は増えにくいが、ガリの出し入れのたびに箸や手指から汚染されるので、仕込み容器から直接客前に出さない。長く置いて色が褪せ、酸味が抜けたガリは交換する。
21.6 茶(上がり)
寿司屋の茶を上がりと呼ぶ。花柳界で淹れたての茶を「上がり花」と呼んだ言葉が寿司屋の符丁になったとされる(語源には諸説ある)。使うのは粉茶で、煎茶や玉露を仕上げる工程でふるい落とされた細かい葉である。安価だが、細かいために成分が速く濃く溶け出し、香りより味が立つ。新芽の先端が丸まった芽茶も濃厚で上がりに向く。
カテキンの収斂作用
茶の渋味のもとはカテキン(タンニンと呼ばれるポリフェノールの一群)である。カテキンにはタンパク質と強く結合して変性させる収斂作用があり、口の中では魚のタンパク質や唾液中のタンパク質と結合し、洗い流される。渋味として感じるのはこの収斂そのものである。脂の強いトロの後に熱い上がりを飲むと口がさっぱりするのは、熱で脂が溶けて流れやすくなり(マグロの脂はおよそ 24〜30℃付近までに溶けきるとされる。第14章)、カテキンが口中のタンパク質と結合して流すからである。こうして口内はリセットされ、次の一貫の繊細な風味を正確に味わえる。カテキンには抗菌作用もあり、腸炎ビブリオや黄色ブドウ球菌などの増殖を抑える。茶・わさび・ガリ・酢は、素手で握る寿司の安全を補う仕組みの一部である(第6章)。
湯の温度、濃さ、器
カテキンは高温ほど溶け出す。上がりは 80〜90℃の熱湯で短時間に出し、熱いまま出す。ぬるい茶では脂が溶けず、カテキンも十分に出ない。ただし濃すぎる茶は渋味がネタの味を邪魔するので、色は濃くても渋みが残らない濃さにとどめる。湯呑みが厚手で大ぶりなのには理由がある。厚い陶器は熱を逃がしにくく、熱い茶を長く保つ。客は熱くて持てないことがなく、カウンターで倒れにくい。提供は着席時、脂の強いネタの後、そして最後である。茶が減ったら言われる前に足す。
21.7 その他の薬味と薬味の理論
薬味の働きは二つの理論で整理できる。マスキングは、強い香りで好ましくない臭いを覆い隠すことで、青魚のトリメチルアミンに対する葱や生姜がこれにあたる(第16章)。対比効果は、少量の別の味が主たる味を際立たせることで、白身や貝、ウニにごく少量の塩を振って甘味を立てるのがこれである(第15章)。柑橘の酸は、揮発性のトリメチルアミンを揮発しない塩に変えて臭いを抑えつつ、白身の旨味を対比で引き立てる。どの薬味も、ネタの弱点を隠すか、長所を立てるかのどちらかのために使う。目的を言えない薬味は乗せない。
| 薬味 | 主な成分と作用 | 合うネタ |
|---|---|---|
| 葱(小葱・あさつき) | 硫化アリル。トリメチルアミンのマスキング | 光り物、アジ、カツオ |
| おろし生姜 | ジンゲロール。マスキング、抗菌 | アジ、イワシ、カツオ |
| 紫蘇(大葉) | ペリルアルデヒド。香り、抗菌 | イカ、白身、巻物 |
| 茗荷 | 香りと歯触り | 光り物、カツオ |
| 柑橘(スダチ・カボス・ユズ) | クエン酸。臭いを抑え、旨味を対比で立てる | 白身、イカ、貝、炙り |
| 梅肉 | クエン酸と塩。酸味の対比 | イカ、紫蘇と組み合わせて |
| 七味・山椒 | 刺激と香り。甘辛さを引き締める | 穴子、炙り |
| ポン酢 | 酸と醤油の旨味。脂を切る | 白子、カワハギの肝、脂の強い炙り |
| 塩 | 対比効果で甘味を立てる | 白身、貝、ウニ、イカ、車海老 |
| 煮切り | グルタミン酸による旨味の相乗(第20章) | 赤身、ヅケ、光り物 |
この章のまとめ
- 本わさびは根茎をその場でおろして使う。粉・チューブの多くは西洋わさび。表示は本わさび 50% 以上で「本わさび使用」、未満で「本わさび入り」。
- 辛味は細胞が壊れてシニグリンとミロシナーゼが混ざり AITC が生まれることで生じる。鮫皮おろしで茎側から「の」の字にゆっくりおろす。ピークは数分後(3〜5 分後とされる)、以降は揮発と分解で辛味と香りが抜けるので提供直前におろす。
- わさびをネタとシャリの間に挟むのは、揮発性の香りを封じ込め、菌が増えやすい境界に AITC の静菌作用を補助的に働かせるため。アニサキスやノロウイルスには効かない。
- 海苔は裏(ザラザラ)をシャリ側に。水分を吸い、米粒を掴むアンカーになる。炙ると赤のフィコエリスリンが分解して緑のクロロフィルが残る。炙りすぎは香りを飛ばす。
- 海苔は湿気・光・熱を避け、乾燥剤と密閉、長期は冷凍。冷えた海苔は室温に戻してから開封する。
- ガリは薄切り、湯通し、熱いうちに力強く絞り、熱いうちに甘酢へ。絞った組織が戻るときに甘酢を吸い込み、拡散で芯まで入る(湯通し後の細胞膜は壊れており、浸透圧ではない)。桃色はアントシアニン。手で盛らず、下げたものは再利用しない。
- 上がりは粉茶を 80〜90℃で濃く出す。熱い茶が脂を溶かして流し、カテキンの収斂作用が口中のタンパク質と結合して口内をリセットする。厚い湯呑みは保温と持ちやすさのため。
- 薬味はマスキング(葱・生姜)か対比効果(塩・柑橘)のどちらかの目的で使う。目的を言えない薬味は乗せない。
確認問題
問1 開店前に本わさびをまとめておろし、密閉容器で冷蔵して営業中に使う運用の問題点として、最も適切なものはどれか。
a 冷蔵するとシニグリンが分解して有毒になる
b アリルイソチオシアネートは揮発・分解しやすく、おろして数分後のピークを過ぎると辛味と香りが抜けていくため
c 冷蔵でミロシナーゼが活性化し、辛くなりすぎるため
d 鮫皮おろしの成分が時間とともに溶け出すため
e 問題はない。密閉すればおろしたての辛味と香りが一日そのまま保たれる
答え:b
わさびの辛味と香りの正体である AITC は揮発性が高く分解もしやすい。おろして数分後(一般に 3〜5 分後とされる)がピークとされ、その後は抜けていき、苦味と青臭さが目立ってくる。密閉・冷蔵すれば減り方は遅くなるが止まらず、おろしたての香りは戻らない。a・c・d は化学的に誤りで、e は現場で最も多い間違いである。使う分だけ提供直前におろすのが正しい。

