中文

すし検定

正文为日语。您也可以使用浏览器的翻译功能阅读。

目录 第10章 マグロ
    1. 序章本書の使い方と二級の位置づけ
  1. 第I部 食の安全

    1. 第1章寿司と衛生 ― なぜ安全がいちばん大事なのか
    2. 第2章寿司屋で気をつける食中毒
    3. 第3章手洗い・消毒・まな板
    4. 第4章冷蔵庫と温度の管理
    5. 第5章なぜ素手で握れるのか
  2. 第II部 シャリ

    1. 第6章米と炊飯
    2. 第7章合わせ酢とシャリ切り
  3. 第III部 魚を知る

    1. 第8章魚の鮮度と熟成のきほん
    2. 第9章冷凍・解凍と下処理のきほん
  4. 第IV部 ネタ

    1. 第10章マグロ
      1. 10.1 マグロの種類
      2. 10.2 部位と筋
      3. 10.3 色が変わる理由
      4. 10.4 熟成と季節
      5. 10.5 ヅケと炙り
      6. 10.6 切り付けと握り
      7. 10.7 安全と表示 ― ヒスタミンと水銀
    2. 第11章白身と光り物
    3. 第12章海老・イカ・タコ・貝
    4. 第13章穴子・玉子・ウニ・イクラ
  5. 第V部 調味料と薬味

    1. 第14章醤油・煮切り・ツメ・出汁
    2. 第15章わさび・海苔・ガリ・お茶
  6. 第VI部 技術と道具

    1. 第16章包丁と研ぎ
    2. 第17章おろす・切る・握る・巻く
  7. 第VII部 歴史と職人の心得

    1. 第18章寿司の歴史 ― 屋台から世界へ
    2. 第19章カウンターに立つ ― 接客と職人の心得
  8. 付録 資料編

    1. 付録A覚えておきたい数字
    2. 付録B寿司ことば
    3. 付録C旬のカレンダー
    4. 付録D出題分野と出題の目安

第IV部

ネタ

マグロから玉子まで

第IV部 ネタ

第10章

マグロ

マグロは寿司店の看板で、多くの店で仕入れ額がいちばん大きいネタです。同じ「中トロ」の札でも、マグロの種類が違えば別の食べ物になります。この章では、マグロを「選ぶ・保つ・仕込む・握る」の順に、なぜそうするのかとあわせて学びます。

この章で学ぶこと

  • 主なマグロの種類と、生と冷凍、天然と養殖の違いを説明できる
  • 部位と筋の走り方を知り、サクの良し悪しを見分けられる
  • マグロの色が変わる理由と、色を保つ保管のしかたを説明できる
  • ヅケ・炙り・切り付け・握りの温度を理由とともに使い分け、妊娠中の客に水銀の目安を伝えられる

10.1 マグロの種類

寿司に使うマグロはサバ科マグロ属の魚で、主なものは6種類です(表10-1)。種類によって大きさ、脂、身の色、値段が大きく違います。

クロマグロ(本マグロ)は全長3 m・400 kgを超えることもある最大のマグロで、大トロ・中トロ・赤身の味の差が最も大きい種類です。南半球にすむミナミマグロ(インドマグロ)は脂が乗るのが一般に日本の夏とされ、クロマグロの脂が抜ける時期を埋めてくれます。関東の寿司店の「本日のマグロ」は、目が大きく赤身の色が濃いメバチであることがよくあります。

表10-1 主なマグロ6種
種類脂が乗る時期身の特徴主な使い方
クロマグロ冬(12〜2月)濃い赤。酸味と鉄分。大トロの脂が最も厚い最高値。トロ・赤身とも最上級
ミナミマグロ日本の夏脂が甘くまろやか。酸味は弱い高値。冷凍・蓄養が中心
メバチ秋〜初冬(近海の生)濃い赤。やわらかい。トロは中トロまで赤身の主力
キハダ春〜初夏(近海の生)明るい赤。締まって脂が少ない赤身・ヅケ。缶詰の原料にも
ビンナガ冬白っぽい桃色。やわらかいビントロ。缶詰の原料にも
コシナガ夏薄い赤。血合いが少ない主に産地で消費

種類を偽って高い種類として売ることは法令違反です。水銀の目安も種類で違うので(10.7)、正しい表示は客の安全にもつながります。

天然・養殖・蓄養

マグロの養殖には、天然の幼魚や若魚を生け簀で太らせる蓄養と、卵から育てる完全養殖があります。どちらも脂の多い餌を与え続けるので、季節に関係なく、天然なら赤身になる背中側にまで霜降りの脂が入ります。ねっとりした脂は魅力ですが、何貫も続くとくどくなりやすいので、トロは薄めに切り、赤身は天然のメバチやキハダを別に用意するなど、天然とは扱いを変えます。養殖が劣るのではなく、扱い方が違うのです。

生と冷凍 ―「生が上」ではない

遠洋のマグロ漁船は、釣ったマグロを船の上で処理し、−60℃前後の超低温で凍らせて持ち帰ります。この温度では色の変化や脂の酸化がほとんど進まず、1年以上たっても色と味がほぼ変わりません。アニサキスなどの寄生虫は−20℃以下で24時間以上の冷凍で死ぬので(第2章・第9章)、こうして凍らせたマグロに寄生虫の心配は事実上ありません。

一方、一度も凍らせていない「生マグロ」は氷詰めで運ばれ、店に届くまで数日かかることもあります。釣り上げるときに長く暴れたマグロは、体温が上がって身が白っぽく濁り、酸っぱくやわらかくなる身焼けを起こすこともあります。船の上ですぐ凍らせたマグロのほうが、何日も氷詰めで運ばれた生より状態が良いことは普通にあります(解凍のしかたは第9章)。

10.2 部位と筋

マグロは解体すると、背側と腹側をそれぞれ頭の方から「上・中・下」に分けます。赤身は背側の中心部、トロは腹側の皮に近い部分にあり、頭に近い腹側ほど脂が厚くなります(図10-1)。

頭・カマ 脳天・ほほ カマトロ 背上(天身) 背中(赤身) 背下 腹上(大トロ) 腹中(中トロ) 腹下 尾 点線=背と腹の境(血合い) 実線=上・中・下の区分 濃い帯=最も脂の厚い所
図10-1 マグロの部位の区分(模式図)。背側は赤身が多く、腹側の頭寄りほど脂が厚い。尾に近いほど筋が強くなる。
表10-2 マグロの主な部位
部位場所特徴と使い方
赤身(天身)背側の中心部。天身は背のいちばん高い所の芯脂が少なく鉄分と酸味がある。筋がほとんどない。握り・ヅケに最上
中トロ背側の皮に近い所、腹中など脂と赤身のバランスがよく、最も万人向け
大トロ腹側の頭寄りの皮の下。カマトロは胸びれの付け根付近脂が最も厚い霜降り。筋も太く多い(蛇腹)。薄めに切る、炙る
中落ち中骨のまわりの身をこそげたもの骨まわりの旨味。軍艦、巻物、ネギトロ
脳天・ほほ頭の身脳天は脂があり筋のない希少な部位。ほほは繊維が粗く焼き物向き
血合い背と腹の境に沿った暗い赤の帯最も傷みやすい。生では使わず加熱料理に

筋の見方

身に白く走る筋は、筋肉のかたまり同士をつなぐ膜で、主な成分はコラーゲンです。尾に近いほど筋の間隔は狭く、筋そのものも太く硬くなります。頭寄りの背の芯(天身)には筋がほとんどなく、大トロには脂と筋の層が交互に重なった「蛇腹」があります。サクを選ぶときは、筋の間隔が広くそろっているか(狭く詰まっていれば尾寄り)、色が均一で暗い斑点や茶色い縁がないか、切り口がしっとり光って乾いていないかを見ます。

10.3 色が変わる理由

マグロの赤は血の色ではなく、筋肉の中にあるミオグロビンという色素の色です。筋肉の中に酸素をためておく色素で、休みなく泳ぐマグロの筋肉にたくさん含まれています。

切りたての身や真空パックから出した直後の身は、暗い赤紫色です。空気に触れると色素が酸素と結びつき、20〜30分ほどで鮮やかな赤に変わります。ここまでは元に戻れる変化です。ところが時間がたつと、色素の中の鉄が酸化して茶色くなります。鉄が「さびた」ような状態で、これをメト化(褐変)といいます。いったんメト化した身は、元の赤には戻りません。

メト化は、温度が高いほど、空気に触れる面が広いほど、光に当たるほど、時間がたつほど速く進みます。冷蔵(0〜4℃)でも、表面は1〜3日で茶色くなり始めます。ですから色を守る方法は次の4つです。

  • 低温に保つ 冷蔵庫のいちばん冷える場所(0〜2℃)に置きます。
  • 空気を断つ 水気をペーパーで取り、ラップを密着させるか真空にします。
  • 光を避ける 明るいネタケースに長く並べません。
  • 切り口を減らす 切り付けは注文ごとに行います。

使い残しのサクは、翌日、表面の茶色い層を薄く削ってから使い、削った身はヅケや加熱料理に回します。

10.4 熟成と季節

冷凍マグロは、解凍した直後は旨味が少なく、味が平らなことがよくあります。凍っている間、旨味をつくる変化が止まっていたからです。解凍したらペーパーで包んで0〜2℃の冷蔵庫に1〜3日置くと、旨味が増え、身がしっとりして、色も落ち着きます。ペーパーは毎日替えます。

生の大型クロマグロは、サクにせずブロックのまま数日から1週間以上寝かせる店が多くあります。切り口が増えるほど乾燥とメト化が進むからです。血合いは早めに外さないと、隣の身に匂いが移ります。温度と衛生の管理がなければ、それは熟成ではなく腐敗です(第8章)。

太平洋のクロマグロは春から夏に産卵し、そのために体の脂を使い切ります。夏のクロマグロは脂が抜けて身が締まり、鉄分の風味と酸味が前に出ます。これを夏マグロといいます。値は下がりますが、さっぱりした赤身は醤油の旨味を吸わせるヅケによく合います。冬は餌をよく食べて脂を蓄え、中トロ・大トロが取れる季節です。

10.5 ヅケと炙り

ヅケ

ヅケは、マグロを醤油の地に漬ける仕事です。冷蔵庫のない江戸時代には保存の知恵でしたが(第18章)、今は赤身の酸味と醤油の旨味を合わせるために行います。漬け地には、醤油に酒やみりんを合わせて火を入れ、アルコールを飛ばした煮切り醤油を使います(第14章)。

大事なのは、漬ける前に湯霜をすることです。湯霜とは、サクの表面に熱湯をかけてすぐ氷水に取り、表面だけを白く固める処理です。固まった表面が薄い膜になり、漬け地が中へしみ込みすぎるのを防ぎます。湯霜をせずに漬けると、塩分が芯まで入って中まで塩辛くなり、色も黒ずみます。湯霜をすれば、外側は醤油の色と旨味をまとい、中は赤身の色と酸味が残ります。

  1. サクを整える 赤身を握り2〜3貫分の幅のサクにし、水気をペーパーで押さえます。
  2. 湯霜 沸騰した湯をサク全体にかけます(または3〜5秒くぐらせます)。表面が白くなったらすぐ氷水に取り、10〜20秒で引き上げて水気を完全に拭きます。
  3. 漬ける 冷ました煮切り醤油に沈め、冷蔵庫に入れます。目安はサクで2〜3時間から半日、切り身なら10〜30分です。
  4. 引き上げる 汁気を拭き、ペーパーで包んで冷蔵します。漬け地は使い回さず、その日のうちに捨てます。

湯霜は殺菌や寄生虫対策のためのものではありません。数秒の湯霜では中心の温度は上がらず、寄生虫も死にません。

炙り

大トロやカマトロのように脂の強い部位は、炙ると表面の脂が溶けて口の中ですぐ広がり、焼き目の香ばしさが脂のくどさをやわらげます。強い火で短時間、表面だけを変えるのが原則で、中まで温めると脂が流れ出て身が縮みます。

10.6 切り付けと握り

筋への包丁

大トロの蛇腹や筋の多い部分は、包丁の刃を筋に対して垂直か斜めに交差させ、筋を短く断ち切ります。筋に沿って平行に切ると、一本の長い筋がネタに残り、噛んでも切れません。筋は口の温度では溶けませんが、短く断てば脂と一緒に口から消えます。これが「口溶け」の正体です。筋が詰まった尾に近い部分は、ネギトロや巻物に回します。

厚みは「シャリと一緒に消える」ように

トロは赤身より薄く切ります。脂の強いトロを厚く切ると、シャリが先に口の中からなくなり、脂のかたまりだけが残るからです。赤身は脂が少なくやわらかいので、やや厚めに切っても溶け、厚みのぶん酸味と鉄分の味がシャリに負けません。切り付けは、柳刃を手前に一息で引く引き切りで行い、切り口をつぶさないようにします(第17章)。

シャリと手の温度

マグロの脂は、冷蔵の温度から少しずつやわらかくなり、24〜30℃付近までに溶けきるとされます(部位や個体で幅があります)。シャリが人肌(約35℃前後)なら、口に入れたときに脂が溶けて舌に広がります。冷蔵庫から出したような冷たいシャリでは、脂が溶けきらないうちに飲み込むことになり、ろうのように舌に残ります。

同じ理由で、職人の手の温度も問題になります。手は脂が溶ける温度より温かいので、トロを長く持つと脂が手に移り、ネタのつやが消えます。脂の強いネタを握るときは、冷たい手水や氷水で手を冷やし、手数を少なく数秒で握り終えます。指先で温度を感じながら加減できることは、素手で握る理由の一つでもあります(第5章)。

わさびと醤油も部位で変えます。わさびの辛味は脂に溶けやすいので、トロにはやや多めにすると脂が切れます。醤油は、赤身には多めが合い、トロは脂が醤油をはじくので少なめにします。ヅケには醤油を付けません。

10.7 安全と表示 ― ヒスタミンと水銀

マグロはヒスタミンのもとになる成分(ヒスチジン)が多く、温度の管理を誤ると細菌がヒスタミンをつくります。常温では速く進み、冷蔵の温度でも長く置けばできることがあります。

水銀と妊娠中の客

マグロは食物連鎖の上のほうにいる魚なので、メチル水銀という物質を体にためています。おなかの赤ちゃんは影響を受けやすいため、日本の厚生労働省は妊娠中の人に向けて、マグロの種類ごとに目安を示しています。

表10-3 妊娠中の人のマグロの目安(厚生労働省)
種類目安
クロマグロ・メバチ1回約80 gとして週1回まで
ミナミマグロ週2回まで
キハダ・ビンナガ・メジマグロ・ツナ缶ふつうに食べる量なら、特に制限はない

メジマグロはクロマグロの若い魚です。妊娠中の客に「これは何マグロですか」と聞かれたら、正しく答えられなければなりません。また妊娠中の人には、冷蔵庫の中でも増えるリステリア菌の心配もあるため、職人の側から生ものをすすめないのが基本です。

この章のまとめ

  • 主なマグロはクロマグロ・ミナミマグロ・メバチ・キハダ・ビンナガ・コシナガの6種で、脂・色・値段が大きく違う。種類を偽って売るのは法令違反。
  • 養殖・蓄養のマグロは季節を問わず全身に脂が入るので、薄めに切るなど天然と扱いを変える。−60℃前後の超低温冷凍のマグロは色と味がほぼ変わらず、寄生虫の心配も事実上ない。「生が上」ではない。
  • 筋は尾に近いほど強く、間隔が狭い。包丁は筋に対して垂直か斜めに入れて短く断つ。
  • マグロの赤は色素(ミオグロビン)の色。時間がたつと色素の鉄が酸化して茶色くなり(メト化)、元に戻らない。低温・空気を断つ・光を避ける・切り口を減らすことで防ぐ。色は鮮度そのものではない。
  • 解凍後は0〜2℃で1〜3日寝かせると旨味が増す。夏マグロはヅケに向く。ヅケは湯霜で表面を固めてから煮切り醤油に漬ける。
  • トロは赤身より薄く切り、シャリは人肌にする。脂の強いネタは手を冷やして手早く握る。妊娠中の人はクロマグロ・メバチを1回約80 gで週1回まで。

確認問題

問1 冷蔵庫に3日置いたマグロのサクの表面が茶色くなっていた。正しい説明はどれか。
a マグロの色素が酸素とくっつきすぎた状態で、冷蔵庫でもう一晩置けば赤に戻る
b 真空パックから出した直後と同じ状態で、空気に触れれば20〜30分で鮮やかな赤に戻る
c 色素の中の鉄が酸化した変化(メト化)で、元の赤には戻らない。表面を薄く削り、削った身はヅケや加熱料理に回す
d 一酸化炭素処理をしたマグロに特有の色である
e 茶色いのは血合いの血が回っただけなので、水で洗えば落ちる

答え:c

茶色くなるのは、色素の中の鉄が酸化するメト化で、元の赤には戻りません(a は誤り。「酸素とくっつきすぎる」のではありません)。b は真空パックから出した直後の暗い赤紫色の説明で、こちらは空気に触れれば赤くなります。d の一酸化炭素処理は、逆に何日たっても鮮やかな桜色のまま変わらないのが特徴です。e のように身を水で洗うと水っぽくなるうえ、色も戻りません。